後日西ロマになるというだけで、西→ヴェネ描写のみです。
原作の「イタちゃんかわええ」程度ですが苦手な方は回避してください。
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「スペインさん明日出張ですよね!」
「あ、ああ」
気迫に圧されたスペインがたじろぎながら肯定すると、日本はパッと顔を輝かせた。柔和な笑みか無表情か、とにかく表情の変化に乏しい日本にしては珍しい。
「これを、ここに、お願いします……!」
渡されたのは封筒と、プリントアウトされた地図。時計を見ると、今日の便に乗せられる時刻は過ぎていた。
「ええよー」
「ありがとうございます!!」
「ちなみにコレ、期限いつなん?」
(徹夜明けやからあんなテンション高かってんな)
地図に表記された最寄り駅を出たスペインは、祈らんばかりだった日本の顔を思い浮かべた。遅れるとの連絡は入れてあるということだが、もし手違いで伝わっていないなんてことがあったとしても、拝み倒して受けて貰おう。
「しっかし……ごちゃごちゃしたとこやなぁ」
分かりづらい場所だと聞いていたものの、これほどだとは思わなかった。覗いてみた路地など冒険心をそそる造りだったが、残念なことに遊んでいる暇はない。スペインは折良く向こうから来る人影を認めて、諦めて道を聞くことにした。
「すんません」
スペインの呼びかけに足を止めた男は、スペインが口にしたビル名と社名を聞いて顔をしかめた。そして、無言ですいと脇を抜けてしまった。
(なんや……こっちの人は冷たいなぁ)
背中を見送ったスペインがしょんぼりとした時、
「おい、行かねーのかよ」
男が振り返った。
「ヴェネチアーノ、客!」
「ふむぅ!」
ヴェネチアーノと呼ばれた青年の、マフィンにかぶりついたままの丸い目と目が合った。慌てる様子が、つまみ食いが見つかった子どものようで愛らしい。
「食事中すんません」
「んーんー、んくん。……いの! おやつだから!」
返ってきた言葉は子どもそのもので、スペインは道案内してくれている男の後について歩いていたときの、何とも言えない不安と居心地の悪さから解放された。
「じゃ、あとよろしく」
「えっ、兄ちゃん? ……もー」
(天使や。天使がおった……)
スペインは自分の商談に身が入らないほど、ヴェネチアーノに魅了されていた。昼食を取ってすぐに、学生時代からの友人に電話を掛けた。
「なー、フランス。遠距離恋愛って難しい?」
『は? お前がすんの? えー』
「無理かなぁ」
『お前が無理なんじゃなくて、相手のコが可哀想だな』
「なんで?」
『なんで、って。前カノと別れた理由お前忘れたの? 連絡取らないで放置したからじゃん』
「ああー、そうやっけ。紹介してくれたお前には悪いことしたなぁ。アイツも会いたいんやったら言うたらええのんに」
『ほらねー。すぐ会える距離でそれだよ。ま、決まっちゃったんなら仕方ないでしょ。どこ行くの?』
「へ? どこも行かんよ?」
『じゃあ彼女が?』
「ううん。俺今彼女おらんよ。今日知り合うた子がな、めぇっちゃ可愛いねん!」
スペインは電話口の友人に、現在地を告げた。
――一方その頃。
「……あの客、日本のとこのかよ」
「うん、スペインって言うんだってー」
「名前なんかどーでもいいんだよ。ちっ、新規なら断ってやろうと思ってたのに」
「そんなこと言っちゃダメだよ兄ちゃん。いい人だったし」
日本がスペインに持たせた菓子折を開けながら、ヴェネチアーノはフォローした。
「なーんで野郎ばっかなんだよ!」
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原作の西とロマの、出会いの印象はよくない(西からロマに至っては「悪い」)のに、だんだん親しくなっていくところが好きです。仲良しというより「近しい人」という感じのなところがなんとも!