「……んだよ、せっかく人がしゃぶってやってんのに」
 吐き出されたペニスはすっかりしぼんでいた。文句を言いながら顔を上げたロマーノは、扉の前に立っているスペインに気が付いて、一瞬だが苦虫を噛み潰したような顔をした。
「邪魔してごめんなあ」
 スペインが白々しく非礼を詫びると、開き直ったのか笑みを浮かべた。
「おかえり」
「ただいま。早速やけど、これはどういうことか説明してもらえるか?」
「見れば分かんだろ。セックスだよ」
「なんで牢の鍵が開いてて、捕虜としてんの?」
「躾がなってないんじゃねーの?」
「捕虜の? それともロマーノの?」
「俺はちゃんと『チンポをしゃぶってもよろしいですか?』って聞いたぜ。こいつらも射精する前には必ず俺に申告する紳士だ。躾が足りてないのはお前んちのやつだよ」
「なるほどなあ。でも、俺んちに任務中に下半身露出して爆睡するような変態はおらんかったはずやねんけどなあ」
 スペインはわざとらしく首を捻って、鍵の開いていた牢の扉を見る。見張りを任せていた部下は、下半身に纏った衣服を寛げ性器を露出させ、涎を垂らして寝入っていた。
「クスリでもキメてたんだろ」
 スペインの手の中にある催眠薬の瓶を見て、ぺろりと舌を出す。この分だと薬師も誑し込まれているだろう。早々に管理体制を見直さなければならない。
 ロマーノは床に寝転がっている男の萎えたペニスをしごいていたが、勃ちそうもない様態に舌打ちして手を離した。
「……おい、誰が抜いていいって言った?」
「ヒッ」
 ロマーノの尻に突っ込んでいた男が情けない声を出して後ずさる。しゃぶられていた男の方は、腿に体重を掛けられているせいで動けず、怯えた顔でスペインを見上げている。
「そんなご無体言われたかて困るわなあ?」
 問いかけたが、震えているのか頷いているのか判別できない。こんな情けない兵士を飼っている先方も気の毒なことだ。

「はぁ、ひどい臭いや」
 楽しみにしていたロマーノの体臭は、すえた臭いにかき消されている。しゃくり上げている唇に口付けると、雄臭さと小便臭さが入り交じった味がした。
「もうちょっと腰落ち着けてくれんと安心して外に出られへんわ」
「じゃあ、出なきゃいいだろうが」
「親分がおらんで寂しかったん?」
 仕置きしたばかりで熱を持っている尻肉に指を食い込ませると、くぐもった声が漏れた。
「……誰とどれだけヤってもスペイン以上なんていないんだ」
「もし見つかったらロマーノはおらんようになってまうんやな」
 涙で濡れた頬が首筋に擦りつけられる。
「お前以外で満足できたら、俺はどこへだって行けるのに」