胸に着いた腕を突っ張らせて顔を伏たロマーノが、漏れそうになる声を抑えようと歯を噛みしめているのだと察して、スペインは笑みを浮かべた。
「そろそろ無理なんちゃう?」
「はっ……そっちこそ限界なんじゃねーの?」
顔を上げたロマーノは汗で張り付く髪を後ろへ流しながら締めつけを強める。スペインの笑みが歪んだのを見て得意げに笑うが、その状態で突き上げてやれば、歯を見せていた口元はたちまち固く結ばれた。しかし、摩擦が強くなったのはスペインも同じだった。
感じているのが自分の熱なのか相手の熱なのかはもはや判別不可能だ。相手に音を上げさせようとすれば自分の首も締まる、引き分けの代わりに共倒れが用意されたゲーム。
「ロマ、難しい顔せんとって?」
意地っ張りな相方の頬に手を伸ばし、指先で首筋をくすぐると少し表情が緩んだ。
「スペインが先にイッたら」
「それはできへん相談やわ」
無茶を言う唇を親指でなぞると、ちろりと出された舌に舐められた。唇の隙間から覗く濡れた紅色は、ジェラートを食べている時と違ってひどく淫猥に思えた。
ロマーノは前後に揺する腰の動きに合わせてスペインの指を食み含んだ。
「この間のパーティーで、ギター弾いてただろ」
軽く歯で押さえて指の腹に舌を這わせながら、舌足らずにロマーノは言った。
「ん、せやったな。どうやった?」
唐突な話題に面食らったが、話していた方が気が紛れるからかと相槌を打つ。
近隣国とその上司もいた割に改まったものではなく、興が乗った自国の上司にギターを弾かされたのだ。その場にいた、しかしプロではない女性に踊ってもらって。
「嫉妬した」
「ああ、美人やったもんな」
見た目はたおやかなのに、いざ踊り出すと周りを圧倒するような華やかさを生む美貌の人だった。こんな状況で出す話題ではないだろうと思ってから、今さら気にする仲でもなかったとスペインが苦笑すると、ロマーノも釣られるように笑った。唾液にまみれた指を口から引き抜くと、唇から離れる瞬間に軽く音を立てて吸い付かれた。
「俺の負けでいい」
「え? でもまだイキきれてへんやろ?」
急な宣言に、先走りで舌と同じくらいにまで濡れたロマーノの中心をスペインは握った。ロマーノの眉がきゅっと寄り、そわそわと腰が揺れる。
「俺が嫉妬したのはギターにだよ」
ロマーノは自身をスペインの手ごと握り込みながらうっとりと目を細めた。
「イカせて」