「カレー味のうんこと、うんこ味のカレー、食うならどっち?」
「なっつかしいネタやなあ」
「選べよ」
「じゃあうんこ。……なんやのその顔」
「何でうんこ選ぶんだよ」
 たとえカレーを選んだとしても、「いいのかそれで。うんこ味だぞ?」と、ロマーノは言ってきたに違いない。スペインは、お見通しだという顔からキメ顔を作る。
「俺はロマーノのやったら食えるで」
「な、何で俺のなんだよ!」
「誰のとも分からんうんこを食わすつもりやったん!?」
「自分の食えよ!」
「そんな究極のリサイクル嫌や! うんこなんか食いたないけど、俺が好きなロマーノが出したうんこやねやったら、それで中和されとる気ぃするやん! おいしそうやん!」
「だからどうして俺のなんだよ!」
「何でなん? ロマーノのうんこ食うたらあかんの!?」
「駄目に決まってるだろーが!」
「理由教えてえや!」
 ダンッと机を叩く。ロマーノは言葉に詰まって、俯いた。部屋の中がしんと静まる。感情的になりすぎた気がするが、後には引けない。
 停滞した空気を破って、ロマーノがぼそりと言った。
「……恥ずかしいだろ」
 沈黙を続けるスペインに耐えかねて、ロマーノは顔を上げた。
「何か言えよこのやろー!」
 スペインは目元を緩めた。
「かわええなあ」
「かわいいって、おま、それ」
「俺、ロマーノが恥ずかしがってるの好きや。小さい頃、俺と二人やったら俺から離れようとしてたのに、お客さんが来たら俺の後ろに隠れてたやろ。最近のロマーノは観光案内もしてるし、外交にも慣れてもうて、寂しい気持ちもあってん」
「スペイン……」
「昔話ばっかりは嫌やって知っとるけど、独占できたころ思い出してしもてな」
 ふっ切ったつもりではいるが、まだ過去のことを思い出してしまう。これではイギリスを笑えないと、スペインは自嘲した。
「俺は別に、たまになら、平気だぞ」
「ほんまに?」
「ああ、俺も……その、大事な思い出――」
「じゃあロマーノうんこ食わせてくれるん?」
「そういう話じゃねーだろ」