いただきもの(小園さんより)

ふと始まったふたりだけのささやかな酒宴。まだ酔いも回っていないだろう時分に投げられた台詞に甚壱は思わず杯の手を止めた。
「甚壱さんって、なんで結婚しないんですか」
普段なら気にも留めないだろう、聞き飽きた疑問。しかしそれを問いかけた相手が相手だけに、甚壱は目を丸々とさせた。
蘭太だ。たしかに、蘭太がそう聞いたのだ。聞き間違いではない。
あからさまに驚いた様子の甚壱とは裏腹に、蘭太は至極落ち着いているように見えた。
「いえ、いいんです。ご結婚の予定が、あろうとなかろうと。ただ、これが言いたいだけで」
口早に言う。そうして続いた言葉を、甚壱は文字通り死ぬまで忘れない。
「俺は甚壱さんが好きです。それだけは、覚えておいてくださいね」

投稿日:2021年10月18日
私は何かにつけて「この二人は付き合ってる」と言っちゃうんですが、この壱蘭は確実に付き合ってますよ!でなければ甚壱が驚くのはおかしいでしょう。この二人は付き合ってる。甚壱が顔に出してしまうところめっちゃかわいくて、これぞ甚壱って感じがします。対する蘭太の一歩引いたようでいて、自分の思いはしっかり伝えて、しかも捨てずに持たせようとしてくる我の強さがまさに蘭太!余白から匂う、描写がないにもかかわらず感じられる関係の深さや感情の重さがものすごく好きです。