以下のものが含まれます。

  • クロノの排便、大便
  • シライの排便補助
  • 便秘解消の参考にするべきではない不適切な情報

健康一番

「ストレスだろ。急に環境が変わったんだ、無理もねえ」
 クロノから便秘を明かされたシライは軽い口調で言った。
 巻戻士になると決めて以降、クロノはシライの前であっても後ろ向きな感情を見せない。日常生活の簡単な場面ですらそのきらいがあったが、体調不良を伴うせいか、今回ばかりは眉のあたりに陰りが見える。
「医務室に行って下剤でももらうか? どの程度の便秘から飲むもんなのか知らねえけど」
「おじさん飲んだことないの?」
「おれはどちらかと言えば下す方だからな。頼って下すったのに悪ぃな。それか浣腸ってのも手か。使い分けが分からねえけど、聞けば教えてくれるだろ」
 部屋に常備している胃薬のパッケージを確認したシライは、飲み過ぎ食べ過ぎにしか効かない旨を読み取ると、肩を竦めてから箱を引き出しに戻した。確認するのを忘れたが、しばらく世話になっていないから、使用期限も切れているかもしれない。
「カンチョウって?」
「尻から薬入れるんだよ。座薬みたいなもんかな」
「座薬って……熱が出たときに使う?」
「そうか、クロノくらいの年だとそうなるか」
「おれは薬飲める」
 クロノはぷいと不満そうな顔を背けた。シライは別にからかうつもりはなかったが、それが却ってよくなかったのかもしれない。子供は子供扱いに敏感だ。
「尻に入れるのは嫌か?」
「うん……」
「ま、そりゃそうか」
 シライは自分のベッドに座っているクロノの元に戻り、目を合わせるためにしゃがみ込んだ。
 下す方だと言った通りシライには便秘の記憶がまるでないため、腹部に手を当てているクロノの苦しみは推し量ることしかできない。最後に出したのはいつだと聞いて覚えてないと言うからには、一日二日の話ではないのだろう。
「……とりあえず風呂行くか。飯は食ってるんだ。ぬくめてマッサージしたら出るかもしれねえし、抜け目なく行こうぜ」
 アイスをどか食いするという案も浮かんだが、それで出なければ地獄を見る。自分の体ならまだしも、クロノの体で試すことではなかった。


   

(罪悪感がすげぇ。座薬が嫌なら下剤にしときゃよかったか)
 遠い目をしたシライの膝には、尻を丸出しにしたクロノが向かい合わせに座っている。対面座位という単語が頭をよぎるが、他に適当な姿勢が思い浮かばなかったのだ。やましい気持ちがあるわけではないからセーフだ、と自分に言い聞かせる。
「出せそうと思ったら出しちまえ」
 胸に額を預けたクロノの頭がわずかに動く。
 シライはそれを頷いたのだと解釈して、やりすぎなほど多くすくい取ったワセリンを、クロノの尻に塗り込める。他人の肛門の位置など分かるはずもなく、最初の一回目を何となくで塗ったおかげで、余計な部分までぬるついてしまっている。後で洗い落とすのが面倒そうだった。
 クロノは左手でシライのパーカーを掴む一方で、シライが教えた通り時計回りに自分の腹を撫でている。息をするようにも言ったから、クロノが呼吸するたび、クロノの体は大げさなくらい膨らんだりしぼんだりしていた。
 風呂から上がり、マッサージをするためにベッドに横たわらせたクロノの腹を撫でながら「腸ってのはこう入ってるんだ」と言ったとき、クロノの瞳には訝るような色が宿った。すぐさま「人体模型とかイラストとか、あるだろ」と付け足さなければ、シライは猟奇趣味があると思われたかもしれない。確かに得物は刀だが、人の腹を掻っ捌いてまじまじ見る機会なんてない。せっかく手に入れた信用を失うわけにはいかなかった。
「心配すんな、大丈夫だからな」
「うん」
 ベッドに浅く腰掛けたシライは、クロノの背中を抱いたまま、足元に敷いた45リットルのゴミ袋とトイレットペーパーをもう一度確かめる。
 大便の処分方法を「おむつ 捨て方」で調べたことがクロノにバレないよう、履歴は即座に消した。両足で踏んで押さえているから、体勢を保っている限りはズレないだろう。便秘だと言うからには硬い便だろうし、ゴミ袋からはみ出すこともないはずだ。
「いきめるか?」
「うん……っ」
 指先に触れている肛門の皺が伸びて、ワセリンまみれだという以上のつるりとした感触に変わる。姿勢が不安定だからだろう。クロノの頭がシライの胸に押し付けられて、ぐっと息を詰めていることが伝わってくる。
 シライが肛門の中央に指を滑らせて、粘膜とは異なるコツンとした硬いものを触った丁度そのときに、クロノが大きく息を吐いた。膝の上の体が弛緩するのを、シライは万一にも落ちないよう片手で支える。
「ここまでは来てるんだな」
 元通りに窄んだ肛門を触りながら、シライは頭を撫でる代わりにクロノの頭上に頬を寄せた。なんせ手は二本しかない。師匠から弟子へのスキンシップとしてはやりすぎだろうが、今は異常事態なのだ。構うまい。
「続けられそうか?」
「……うん」
「よし」
 シライはワセリンを肛門よりも内側に入れ込む意識を持って、再びクロノの肛門を撫でる。これでだめなら直腸に指を入れて、便を崩していくことになるだろう。そこまでする必要があるなら医務室に助けを求めるつもりだった。クロノの助けになれることはうれしいが、クロノの羞恥心や今後を考えるなら、他の方法を選べる方がずっといい。
「もう一回いきめるか? 力を入れづらかったらおれの腰を足で挟め」
「……うん」
 クロノの両手がシライのパーカーに掛かる。伸びるかも知れないが、気にしていられる場合ではない。シライはタイミングを外さないよう、クロノの呼吸に自分の呼吸を合わせる。
 クロノが息を吸い、ぐっと体に力を入れる。
 シライはクロノの筋肉の変化を感じながら、排便するべく開いたクロノの肛門の手助けをするべく、柔らかい粘膜を支えるように指を添える。張った粘膜の向こう側には、水分を失い硬くなった大便の気配があった。
「大丈夫だ」
「……っ」
 シライは低く声を掛ける。肛門を窄めた後の短い息継ぎ。三度目の緊張。クロノの体温とシライの体温の両方で緩んだワセリンの油分に助けられて、ぬるりと表出した大便の一端が、ぽとりと欠け落ちた音がした。
 シライとクロノは一緒になって息を吐いた。
 本来なら部屋の中にあるはずのない臭気。シライの指先には、排泄されることなくクロノの内側に引っ込んでしまった大便の感触が残っている。
 見てはなるまいとシライが視線を下げずにいる一方で、クロノはシライの胸に寄せた額をもそりと動かした。
「……出せそう」
「よし、もう一回だな」
 何事も成功体験は大切だ。できた、ということが励みになる。出せそうと言うなら場所をトイレに変えることもできたが、環境の変化で再び出せなくなっては元も子もない。クロノが言い出さない限り、シライはベッドサイドでの排便を継続するつもりだった。
 クロノが息を詰めるのに合わせて、シライはクロノの肛門に指を添えた。
 一度目より二度目、二度目より三度目の方が勝手が分かる。
 障壁となっていた硬い部分の一部を失った便は、ぱたりぱたりと降り始めの雨音のような崩落の音をさせながら、ずりずりとクロノの体内から外へと抜け出していく。クロノもここが正念場だと思っているのだろう。息を詰めたまま、ぐっと体に力を入れ続けている。
 力添えが必要ないと判断したところで、シライはクロノの肛門から手を離した。
 ほぼ同時に、大便がゴミ袋に着地するどさりという大きな音が聞こえた。
 クロノが胸を震わせるようにして息を吐いたのを肌で感じて、シライもほっと息をついた。
 嗅ごうという気がなくても、強まった臭気はシライの鼻腔を満たしてくる。他人の便臭を、それも誰のものと分かっている状態で嗅ぐ機会はなかなかない。シライは努めて自然に酸素を取り込む。便秘の後だというだけあってなかなかの臭いだったが、露骨に息を潜めてはクロノが傷つく。
「おじさん」
「ん」
「……ありがとう」
「おう」
「片付け、おれやるよ」
「ああ、いいって。おれまだ手袋してるから」
 恥ずかしいらしく目を合わせないクロノを、シライは膝からベッドに移動するように促す。出させることばかり考えていたせいで、尻を拭くことを計画に入れていなかった。トイレットペーパーは敷くための分を取っただけで、残りはトイレにある。
「あっ」
 元々気まずそうな顔をしていたクロノが、さらに気まずそうにする。
「……まだ出そう……」
「おう、ここでしちまえ」
「いい、トイレ行く。ごめんおじさん」
「おお、行ってこい」
 便意を堪えているのだろう。不自然な早足でトイレに向かうクロノを見送ったシライは、クロノが用を足している間はトイレに大便を流せないことに気づいて、足の間に残された大便を見下ろした。たった一本ながら、あの小さな体のどこに入っていたのかと思うような大きさだった。
 ごつごつした岩肌のような集合から始まり、終わりの方でもまだ水分が足りていないらしくひび割れを有した濃い色の表面が続く。先んじて崩壊した部分はいかにも硬そうで、クロノの肛門が無事か気がかりだったが、ゴム手袋を見る限り出血はないようだ。
 帰ってきたら聞くだけ聞くか。
 トイレの水音を聞いたシライは、クロノの快便を察して胸をなでおろした。

投稿日:2024年8月11日
どうにかしてキャラのうんこを描写したいけどキャラ崩壊はさせたくない。いつも困ります。