いただきもの(小園さんより)

唐突に差し出された菓子を見て、プロメテは遠慮もなく眉をしかめた。何気なく通りがかった商店街でのことだ。プロメテは食べ物を食べなくても生きていけるから、店先に並ぶ料理に興味もなければ関わりたいとも思えない。だから足早に過ぎ去ろうとしていたのに妙な着ぐるみに捕まったのだった。
うさぎなのか熊なのかよく分からないその着ぐるみ。ひとつも肌を晒していないキャラの中身を、しかしプロメテはよく知っていた。
「……何をしている、ヴァン」
「な、なんでバレたんだ?」
疑問には答えず、ふん、と鼻を鳴らす。
ちらりと見れば、差し出されている菓子はセロハンに巻かれたキャンディだった。その柄にはなにかのチラシが巻かれていて、ヴァンがアルバイトだか胡散臭い人助けだかで菓子を配り歩いていることが見て取れる。
いつもならここで会ったが百年目とばかりに戦うはずだが、先の戦闘で苦くも負けたプロメテは、その時の「もぉ最近立て続けで疲れたし、次会った時は休戦で」というヴァンの条件を飲むしかなかったのだ。
その時の苦々しさを思い出し、プロメテは当たり前に無視をして歩き出した。
「えっ、もらってけよ!」
「断る」
「なんでだよ、減るもんじゃないだろ。これ配り終えないと、オレ帰れないんだよ」
「はっ、それなら尚更受け取れないな」
なぜか執拗に付いてくるヴァンをいなしながら歩き続けるも、無理やりポケットにキャンディを突っ込まれそうになっては立ち止まらざるを得なかった。思わず着ぐるみの頭越しにゲンコツを落として「二度とこんな真似はするな」と言い置きその場を去る。

そうして終わったと思ったのに。
反対のポケットに突っ込まれていたキャンディを握りしめてプロメテはヴァンに対峙していた。
「ヴァン、お前……!」
「お、やっぱり来たな」
にやにやと笑う。
廃業された遊園地の観覧車の上。チラシの代わりに巻かれた一方的なメモを律儀に守るプロメテに、ヴァンはヤニ下がった顔で言った。
「だって、素直に呼び出しても来てくれないだろ?デート」
そういうところが、すきなのだ。

投稿日:2018年1月28日
小園さん(pixiv/のださん)からいただきました。
親しさとはまた違った慣れを感じる距離感と、ヴァンの仕事なのか趣味なのか分からない勤労っぷり、プロメテの敵役らしい律儀さがすごく好きです!イメージですが悪役って主人公より真面目なところある気がします。戦う理由がないときならばプロメテであっても他のヒトビトに対するのと同じように接せられるという懐の広さというか、歪さのある博愛主義みたいなものを感じてそこもいい……と思ってからヴァンからプロメテへの執着を垣間見せられて、やっぱ小園さんの作品の表面さらっとしてるのに下に別のものが仕込まれているところがたまりません。