満足度調査
「ゴム捨てるとき気ぃ遣うてや」
急に来られたって困るわ、と言いながらも直哉は拒まなかった。洗っていない尻の穴をおざなりにほぐしていた甚壱は、指にかぶせていたコンドームを裏返しに外して、汚れが付着しているかを確認するように目の前にぶらつかせた。
「もー、やめぇ」
発言がやぶ蛇だったことに気づいたのだろう。直哉はゴミ箱に手を伸ばすと、嫌そうな顔で甚壱の方へ移動させる。甚壱は直哉を動かしたことに満足した顔をするでもなく、淡々とコンドームをゴミ箱に捨てた。
「なんもせんて言うたやろ。さすなや」
「俺が文句を言われる話か?」
「どう考えてもそうやろ。言うたやろ、俺は寝るとこやったって」
ぼすん、と直哉は俯せ寝に戻り、わざとらしいような欠伸をした。
「寝ていろ。勝手に使う」
「人の体を何やと思ってんねん」
不満げに言いながらも尻の力は抜けている。甚壱は直哉の尻のあわいに直接ローションを垂らし、駄目押しに指で馴染ませながら自分の陰茎をしごく。勃ち上がったものにコンドームを被せてから、直哉の尻に挟み込むように先端を含ませると、直哉は俯せのまま笑った。
「勃つん早いな。ヤッてきたとことちゃうんか」
「食い足りん」
「蘭太君かて体力あるんやから付き合え……っる、やろ」
くびれた部分までを挿入してから一呼吸置き、直哉が次の呼吸をする間に半ばまで飲み込ませる。よく知った相手だ。遠慮する気はなかった。
甚壱が直哉の背中に覆いかぶさるようにして残りすべてを収めると、直哉はそれを締め上げた。尻の穴は協力的なくせに口先の態度はそっけなく、枕に頬をつけたまま目を閉じている。甚壱は自分の陰茎をしごくために、ゆっくりとピストン運動を始めた。ついでに、直哉のいいところに当たるように腰を調整すると、直哉の眉間の皺が深くなった。
「……な、話の続きやけど、なんで蘭太とやらんの」
「蘭太は部屋に帰った」
「ええ? 朝までおらんの? 起き抜けに『甚壱さん、昨日はすごかったです♡』って言いそうやん」
自分の似ていない声真似にウケて笑い出した直哉の腹の振動を丁度よく使いながら、甚壱は本物の蘭太を思い返す。考えていることがバレているのだろう。肩越しに寄越された直哉のおもしろがるような目を見返すと、直哉はますますニヤついた。
甚壱は溜め息をついて口を開く。
「本日はありがとうございました。至らない点はございましたでしょうか――向上心があるのは可愛いが、あの調子では朝まで同衾するのは難しい」
「可愛いて、甚壱君の口から出てええ単語とちゃうやろ」
「あれを表すのに適切な言葉が他にあるか? 最大三回だな、できるのは。砕けた腰で正座しようとするのは……なかなかいいが、見てられん」
「うわ、今のは聞きたくなかった」
直哉は本心から言った。嫉妬からくる発言ではないことは無論甚壱にも分かっている。蘭太の可愛さに共感を得る気はさらさらないので構わなかった。
「ご利用アンケート作ったりや。満足度を1~10で表して、優秀な日が続いたら表彰したるねん」
「必要ない。毎回満点だ」
「やかましいわ」
- 投稿日:2021年6月24日