忍耐力
絶頂に伴う痛いほどの締め付けが緩むと同時、かくんと力が抜けた蘭太の体を抱きとめ布団の上に横たえる。
甚壱は荒い息を吐く蘭太の真っ赤になった顔を見つめながら、射精していないために硬さを保ったままの自身を抜いていく。吸い付いてくる縁をカリで弾く、それだけの刺激で軽くイッたらしい蘭太の様子を窺う甚壱に、蘭太は反対に気遣わしげな眼差しを向けてきた。
「大丈夫だ」
蘭太が果てた後に冷めやらぬ熱を自分で始末するのは、残念ではあるが嫌ではなかった。
甚壱は蘭太の存在を背中に感じながら座り、自身を握り込んだ。
と、借りるつもりだった体温が身動ぐ音と共に離れる。流石に寂しさを覚えて後ろを見ると、大儀そうに寝返りを打った蘭太が、へたりと崩れるように腹ばいになったところだった。
甚壱の視線に気付いたか、確認するように向けられる目。力が入らないらしい、枕に顔を埋めたままの、困っているようにも見えるふにゃりとした笑顔。蘭太は深呼吸を一度してから、動かすのも億劫そうな頭を持ち上げようとして、やめた。
意図を汲んだ甚壱が逆側から振り向き直すと、蘭太の両手は蘭太自身の尻に添えられていた。
躊躇いがちに左右に割り開かれた尻たぶの間で、甚壱が嬲ったせいでぽってりと充血した肛門が、誘うように口を開けている。潤滑剤の粘質なぬめりがてらてらと光ったそこが、ひくんと収縮するのを見た甚壱は、体がカッと熱くなるのを感じた。
「どうぞ」
甚壱の沈黙をどう受け取ったか、蘭太は言葉で促した。
「蘭太……」
甚壱は自らを落ち着けるために手で顔をこすった。蘭太が達した回数を数えてはいない。だが、満足させられた自信がある。これ以上付き合わせるのは、蘭太の体で自慰をするようなものだ。
「甚壱さん?」
甚壱は蘭太の臀部から顔を背けて、大きく息を吸った。体を傾け身を乗り出し、蘭太の顔を見ないようにしながら、蘭太の頭を撫でた。手のひらに触れる髪は、汗でしっとりと湿っている。
「俺は大丈夫だ。休んでいろ」
座り直して、すっかり蘭太の中に入れるつもりでそそり立つ、本能が具現化したような屹立を強く握る。収まりがつかないとはこのことだ。快感を得たいという以上に、焦りが手の動きを早めさせる。蘭太はこんな誘い方を一体どこで覚えてくるのか。
安心したのか、落胆したのか、それともあくびをしたのか、後ろで蘭太が息を吐く。
振り返ることが呪いを発動する条件になる、そういう呪霊に対峙したような気分だった。
- 投稿日:2022年6月8日