蘭太が甚壱の大便を食べます。排便に伴う羞恥要素はありません。

全部好き

「ふ……んんっ……はっ……」
 顔を尻に埋めるようにして、蘭太は布団に横になった甚壱の肛門を一心に舐めていた。鼻先で毛を掻き分け、窄まりの襞を数えるように舌先でくすぐる。
「甚壱さん……」
 口から出かかった「まだですか」という催促を寸でのところで飲み込んで、蘭太はゴクリと喉を鳴らした。
 甚壱の大便ならば食べられるというのは、直哉との応酬に端を発する、言ってみれば売り言葉に買い言葉の発言だった。蘭太の嗜好に基づくものではない。
 自分の口から出たことながら、あまりに突拍子がないために頭を離れず、甚壱の肛門からひり出される未だ見ぬ大便が、それを口に含むということが、想像すればするほどに甘美なものに思えてくる。
 渇望に耐えきれなくなった蘭太は、甚壱に大便を食べさせてほしいと申し入れた。
 滅多にない蘭太の頼みであるために、甚壱は渋々ながらも了承したが、気分が乗ればと言う但し付きだった。それで、こうして蘭太は獣の親が子にするように、愛情をこめて甚壱の排便を促していた。
「蘭太」
「はい!」
「……いいんだな?」
 大便を出すこと自体は造作もないことだった。甚壱がここまで蘭太を待たせたのは、蘭太の口を大便で汚すことに躊躇いがあったからだ。蘭太がドロップ缶から出たハッカ飴を口にして悲しげな顔をしていたのは随分と昔の話だったが、甘いものだけを選って口に入れてやりたいと思うのは、幼い頃から見てきたが故の親心のようなものだ。
「もちろんです!」
 元気の良い返事に、甚壱は短い溜め息をついた。

 移動した風呂場で、床に座り込んだ蘭太は再び甚壱の尻に顔を近づけた。甚壱の意思でもって肛門が開かれたのと同時に、臭いがより強くなる。先程までとは違う、明確に糞便と分かる臭いを胸いっぱいに吸い込みながら、蘭太は肛門から顔をのぞかせた大便を迎え入れようと口を開けた。
 ネチネチと音を立てスムーズに排される大便が、舌の上を滑っていく。味を感じるよりも先に溢れ出す唾液と、遅れてくる舌を刺すような苦味。滑らかさの向こうにある微かなざらつき。温かさは人肌のそれだった。息を吸うたびに、味とも臭いともつかないものが流れ込んでくる。
「ううっ……っぐ…………」
 甚壱の大便は、とても口だけで受けきれる質量ではない。立派な姿を損ねることを惜しく思いながら、蘭太が顎を引くと、行儀が悪いと思いつつ受けていた手皿の上に、ぼたりと入り切らない分が乗る。雑木林で見る土のような茶色で、きめ細かな表面はいかにも消化状態がよさそうだ。蘭太は唇に咥えた大便に歯を立てて噛み切り、余分も手のひらの上に落とす。ねっとりした質感が唇と歯に纏わりついて、しゃっくりのようなものが腹の中を揺らす。
 口の中で、大便は唾液と混じり合い、強張って動かない舌の上だけでなく頬の内側まで味を広げていく。蘭太はむぐりむぐりと口を動かし、噛む度に胃の奥から迫り上がってくる吐き気を堪えながら、なんとか大便を飲み込もうとする。
「んぐ……んっ……ッ!」
 無意識に息を止めたまま、蘭太は涙の浮かぶ目を瞬かせた。意地で口を閉じ、一度、二度、と唾を飲む。液体だけではなくなった唾液が喉を通るその度に、一層強くなった吐き気が襲ってくる。震えながら飲み下そうとしているのは咀嚼した大便か、逆流してくる胃の内容物か、もはや分からない状態になっていた。
「吐け、蘭太」
 蘭太の口元に洗面器を差し出し、甚壱は短く指示した。
 有無を言わさない視線と言葉に、
「ッ、ウ……げぇッ……!」
 蘭太はぐちゃぐちゃになった大便を吐き出した。止めどなく溢れる唾を口からぽたぽたと垂らし、そのまま胃の中身も吐き戻す。判別できる程度の色に残っている消化途中の朝食が、便の色を覆っていく。
「っは……うっ……」
「口をゆすげ」
 甚壱は洗面器を脇に置き、弱めに出したシャワーを蘭太の方に向けた。蘭太は水飲み場でするように水を口に含み、洗面器の中に吐く。甚壱は蘭太の手に後生大事に持たれている自分の大便を睨んでから、ひとまず蘭太に口をすすがせることに集中した。

 言い出しておいて果たせなかった情けなさからか、眉を下げている蘭太の頭を、甚壱は子供の頃にしてやったように撫でる。
「糞は食い物じゃない」
「……はい」
 項垂れた蘭太は、口の中にある強烈な違和感とまだ収まらない吐き気、麻痺してきているはずの鼻でもなお臭う便臭に包まれながら頷いた。甚壱の言葉に間違いはない。手に残る甚壱の大便の温かさと重み、それから今も乗せられている大きな手に、これからも頑張ろうと決意を新たにした。

投稿日:2021年6月15日
どうにかして食糞を書きたい思いから直哉にご協力願いました。スカトロが大好きなのですが、キャラが持っているだろう常識との擦り合せが難しいです。
更新日:2021年6月17
加筆