※注意書き等
言葉の綾ってやつでして
「ちょ、待って、お師匠、待て、待てって!」
「なんだ人を犬のように」
あろうことか、セージはマニゴルドのものを口に含もうとしていたのだ。
マニゴルドが慌てて制すると、セージは不満げに口をとがらせた。
その角度はまずい。見上げてくるセージの上目遣いに、マニゴルドは口を突いて出そうになった言葉を飲み込んだ。
寝台に寝そべったセージの、普段より幾分ゆるめに着付けられた寝間着の裾からは、しっかりと筋肉の付いた脛が覗いている。白いシーツの上にあっても「白い」と感じられるその肌の感触を思い出して、マニゴルドは鼻の奥が熱くなるのを感じた。
何の刺激も与えられなくても、視覚情報だけで勃起できる。それが今の正直な気持ちだ。ひょっとしてわざとなのか。肩を滑り落ちる髪も、見えそうで見えない胸のはだけ具合すらも計算ずくなのか。知略に優れていることは知っているが、それを閨事で発揮してどうしようと言うのだ、この師匠は。
「お師匠はそんなことしなくていいんだって」
「私はお前に“そんなこと”をさせていたのか?」
「ちがっ……」
楽しげに笑うセージを見て、マニゴルドはガシガシと頭を掻いた。
「あー、もう、人が悪いぜ。あんまり俺の心を弄ばないでくれよ」
「それはこちらの台詞だ。積極的なところが見たいと言うから乗ってみたというのに」
はぁ、と溜息をついて、いじけたように指を動かす――マニゴルドJr.の上で。
「俺が悪ぅございました! わがまま言ってすみませんでした!」
本当に、本当に勘弁して欲しい。男役をやる以上、できればリードする側でいたいのだ。悲しくなるくらいセージの一挙手一投足に素直に反応してしまう愚息に、頼むから大人しくしていてくれと心の中で言い聞かせながら、マニゴルドはセージの手を取って謝った。
じっと見上げてくるセージが、伺うようにこてんと首を傾げた。
「……で、どうするのだ。嫌だと言うのならせぬが」
「オネガイシマス」
- 投稿日:2014年7月11日