何の脈絡もない学生パラレル
修学旅行の夜
「ミロ、眠いのならば先に寝ていろ」
敷かれた布団の上で胡座をかき、他愛もない話をしていた時のことだ。明らかに常より覇気のないミロに、アイオリアは言った。蛍光灯の下であるせいもあるだろうが、生返事を返すミロの金髪も、心なしかくすんで見える。本日の行程は全て終わっている。ミーティングのために出て行ったカミュには悪いが、たとえミロが眠っていても、自分が起きていさえすれば気を悪くすることもないだろう。
「お前が添い寝してくれるか」
「馬鹿を言うな。枕でも抱いていろ」
アイオリアは自分の枕を掴み上げて、ミロに投げ渡した。受け取った枕をぼんやりと見たミロは、それをポイと後ろに投げた。
「お前がいい」
伸し掛かってきたミロに押し倒される形で、アイオリアは寝っ転がった。同い年にもかかわらずなぜか兄貴風を吹かせてくるミロは、たまに変に駄々っ子のようなことをする。人の体温と鼻をくすぐる石鹸の香り、布団の柔らかさに眠気を誘われて、アイオリアは体を起こそうとした。その体を押し留めるように、ミロの体が重くなる。
「おいミロ」
「お前も寝てしまえ。どうせカミュのことだ、このまま消灯だろう」
「それにしたって二人とも寝ていてはまずかろう」
くぐもった声で言うミロにぎゅうと抱きしめられたまま、アイオリアはカミュが出て行った襖を見る。
「あいつは構うまい」
角度を変えたらしいミロの息が首筋に当たって、アイオリアは思わずミロの背中に回した腕に力を入れた。ミロになぜか強く抱き返されて、ようやく、その体勢の異様さに思い当たる。
「ミロ!」
「どうしたアイオリア」
「……いや」
この体勢はまずくないか。気にしていないらしいミロに対してそう口にすると、自分だけ変な想像をしてしまったようで気恥ずかしい。アイオリアは口ごもった。これだけ密着していると高まる緊張を隠し通すことも難しそうだ。
「硬くなっているぞ、アイオリア」
「な!?」
「抱き心地が悪くなるから力を抜け」
「あ、ああ」
ミロの言葉に従って力を抜いたアイオリアは、襖の向こうのドアがノックされる開く音を聞いて、ミロを跳ね飛ばした。
- 投稿日:2015年1月19日