雑記帳

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#再投稿 #映画感想 『アナザーラウンド』

上映前の予告で気になったので観てきました。仕事中に飲酒することはポジティブな効果を得られるのかという心理学の一説を、中年の教師たちが自分の体で検証する映画です。100%コメディだと思って行ったらそんなことはなかった。いい作品でした。
結末までのネタバレを多分に含みます。

象徴的に美しい景色も汚い景色もなく、登場人物の日常を追っているような映画でした。作中で音楽がかかるシーンくらいしかBGMが流れないところが好きです。スウェーデン映画の『ギルティ』(どうやら感想を書いていないらしい。こちらもいい作品でしたが、自宅で観ると雑音が気になるかも)を観たときにも思いましたが、北欧の人の家の照明は私には暗い。なのでラストの登場人物の受け持ち生徒が卒業パレードをするシーンでの、日差しの下にある町や生徒たちの笑顔がとても明るく見え、希望に満ちた未来を感じるなーと思いました。

中盤(終盤かも)の強いお酒でカクテルのようなものを作って飲んでいくハチャメチャなシーンが好きです。楽しい。おつかいを頼まれた新鮮なタラを捕るべく、ベロベロになった状態で港で釣りをするシーンも好き。あとマーティンと家族の普段はそこまで会話がないけれど、行事(非日常)のときは団らんできているところや、飲酒によって打ち解けたようでいて一時的なものにすぎなかったところもいいなと思いました。マーティンの酔った勢いの言いがかりが言いがかりじゃなかったのは驚いた。
映画で見られた範囲では、生徒たちがみんな上手く行ったらしいところがとてもよかったです。飲酒によってマーティンが自信ありげにする授業も冒頭の棒読み授業よりずっと楽しかった。範囲を終えられてよかった。飲酒=悪の構図にならなくてよかった。子どもたちには明るい未来があってほしい。生徒が教室に揃っているシーンは人種の多様性がありました。あれがデンマークの今の教室なのかな。

トミーは校内での飲酒がバレたことで職を解かれたのでしょうか。実験に参加した誰もが一時深酒をするようになって、それでも飲まないようにするようにできたのに、彼だけお酒を辞められなかったのは、人との繋がりを求めながらも得られなかった孤独によるものが大きい、という描かれ方のように感じました。コーチをしていたサッカークラブの少年たちが葬儀に現れ、気にかけていたメガネ坊の成長も見られたことで報いはあったと思いますが、マーティンは家族との再構築、ニコライも家庭は継続、ピーターも彼女ができそうな中、トミーだけ老犬(近いうちに来る別れ)の世話をしている。船を漕ぎ出すという一見前向きに見える描写のあとでの自殺。寂しいなぁ。

ラストが明るいからスッキリ終わった印象が強いけれど、終わってみるとトミーのことを考えてしまう。畳む

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