以下のものが含まれます。
- 「依存症」のシライがもしゴローに性欲の解消の手伝いを頼んでいたらというIF
- ゴロー←シライの片思いで行われる道具を使った性行為
- ゴローがシライに頼まれてシライの尻にバイブを入れる
- おもらし(小)
せめてそれだけ
「どうした?」
「いえ……人の声が聞こえた気がして……」
職員の視線を追って壁を見て、耳を澄ませる素振りを見せたゴローは、その姿勢でしばらく止まってから首を振った。
職員が聞いたという「声」は、ゴローの耳には聞こえなかった。目の前の職員との年は十歳ほど差があるが、まさか可聴周波数帯域を外れているというわけではあるまい。気のせいと思える程度で、今聞こえていないのならば、あえて追求するべきことではなかった。
「……ラジオのスイッチを切り忘れたのかもしれん」
「ラジオですか?」
「ああ。録音が溜まっていてな。聞かずに消すのも惜しい気がして流しっぱなしにしていたが、身が入らないから同じことだ」
「お休みのところを――」
「いや、そういうつもりではなかった。気にしないでくれ」
確認してほしいと言われたデータは、本来ならばゴローが研究室にまで足を運んで見るべきものだ。このところ業務が立て込んでいて顔を出せていないし、職域の垣根が低かった最初期と違い、巻戻士本部で働く人数が増えた今、はじめから研究職として入った職員との連携は課題でもある。
ゴローはデモンストレーション用に持ち込まれたタブレットに視線を戻した。
「続きを聞かせてもらえるか?」
「悪いな、思ったより長引いた」
ゴローは中にいるシライに声を掛けながら部屋の電気をつけた。
執務室の隣。仮眠室のつもりで作った小部屋は、簡易テーブルを入れてしまったせいで仕事を継続することも多い。日頃はゴローしか入らない、何の臭いも感じないほど馴染みきっている部屋が、今は他人由来のむわりとした温度で満たされている。
執務室と繋がるドアを閉めたゴローは、床に膝をついているシライを見下ろした。
後ろに回した両腕と、正座するように折り曲げた両足は、革を模した黒いベルトで拘束されている。股間を回るベルトはシライの肛門に挿入したバイブレーターが抜けないようにするもので、バイブレーターのタイマーはきちんと作動したらしく、ゴローが部屋を出るときにしていたモーター音は停止して、今はシライの荒い息遣いだけが聞こえていた。
一連の道具を用意したのはシライだ。ゴローがシライに頼まれた役目はシライにそれらを装着し、時間まで放置すること。シライの部屋でする予定をゴローの目の届く場所に変えたのは安全性に不安があったからで、途中で呼び出しが掛かったのは不可抗力だった。
シライは粛々と服を脱ぎ、ゴローの前に無抵抗な体を差し出したから、ゴローが諦めさえすれば簡単な作業だった。拘束に使っているベルトはシライがその気になれば壊せる既製品で、一畳にも満たない防水シートの内側、最初にゴローが取らせた姿勢のまま大人しく待っていたということは、シライはその気を起こさなかったのだろう。
快感に集中できるように目隠しをさせたせいで、シライの表情は分からない。ゴローが戻ったことには気づいているらしく、首を巡らせてゴローがいる方を向いている。見上げる位置の正確さに、合うはずのない目が合った気がした。
「シライ、目隠しを外すぞ」
ゴローはシライの口に噛ませたボールギャグから垂れる涎を見なかったことにして、シライの目元を覆う黒い布を外した。
急な明るさに目が慣れないらしく、シライはしきりと目を瞬かせた。
泣いた跡が見える目元に、紅潮した頬。眩しさに細められているせいもあるだろうが、滅多なことでは疲れを見せないシライの憔悴した姿は珍しい。
「ひどい顔だな」
「あお……ぅ」
猿轡のせいでろくに言葉を話せないことを思い出したのか、何やら言いかけたシライは口をつぐんだ。恥じ入るように俯いて、そのせいでぽたぽたと垂れた涎を止めようとしたのか、啜り上げる音を部屋に響かせる。バイブレーターのモーター音が聞こえていたときならば打ち消されたはずの音に、シライはぐっと眉根を寄せる。続いて聞こえた吐息は震えていた。
シライが話し出そうとする気配を感じたゴローはシライの顔に視線を据えて待ったが、シライは瞳をうろつかせるばかりで答えを寄越さない。
「シライ?」
「……ッ、ぁい……」
言葉を発せないのは互いに分かっていることだ。シライの非難めいた眼差しを受け止めたゴローは、要領を得ない回答では分からない、とわざとらしさを承知の上で首を傾げる。ゴローの反応を受け取ったシライの瞳に宿ったのは、怒りではなかった。
平時にはないしおらしさと、あることすら感じさせなかった情欲。ゴローはシライが自分に向けて表出させるそれらから目を背け、シライの下に敷いたペットシーツに目を落とした。
吸水性を謳うだけあって見た目の変化は少なかったが、本来の用途ではないからか、粘性のある液体は吸いきれないらしい。ゴローの目が何を見ているのか悟ったシライが、居心地が悪そうに、そしてそれだけではない感情を湧かせながら、その場で身じろいだ。
合皮のベルトとベルトの間、存在を強調するように囲われた性器は、こんな状況で熱を帯びている。元特級巻戻士。シライの華々しい経歴を知る誰もが見たくない姿で、シライ自身も見せたくない姿だろう。
「物足りないのか? ……仕方ない」
「ぅあうっ」
床に片膝をついたゴローはシライの汗に濡れたうなじを押さえ、前傾姿勢を取らせた。楽な姿勢を取らせようにも、悪趣味な拘束を望んだのがシライなら、ゴローが仮眠に使うリクライニングソファに寝ることを拒んだのもシライだ。ひどい扱いをされたいのならば、とことんまでやるべきだった。
ゴローはシライの太腿と腰を結んでいる、バイブレーターを固定するためのホルダーに手を掛けた。シライは首を振りながら喚いているが、噛ませている猿轡のせいで内容は全く聞き取れない。
ホルダーの留め具を外したゴローはシライの背後に回ると、シライの尻から尻尾のように飛び出したバイブレーターの端を掴んでゆっくりと引きずり出した。
シライが持ってきたバイブレーターは、ゴローがそれと聞いて思い浮かべる男性器を模したものではなく、球体が連なった形状のものだった。葬式帰りのような顔をしたシライに「新品だから」と言われてもそうかと思うだけで、「根元まで入れて平気だ」という申告にも、頷いてやることしかできなかった。
ゴローが手を動かすにつれ、閉じていた肛門はぽこぽことした球によって内側から開かれて、球の表面を舐めるように窄まってはまた開かれる。連なる球の数だけ繰り返される動きは、シライに快楽を与えているようだった。
「うぅっ……く、ふぅう……っ!」
タイマーが作動するまでバイブレーターはずっと動いていたものの、抜け出る動きには慣れていないのか、シライは聞いているゴローが居た堪れなくなるような声を上げた。静かにしろという意図でゴローが尻を叩くと、シライは短く声を上げて黙り込んだ。
ゴローはバイブレーターを最後まで抜ききってから、呼吸でもしているように開閉するシライの肛門を見て、傷がついていないことを確認する。衛生のための手袋をし忘れていることに気づいたが今さら遅い。
ゴローは残っていたローションをバイブレーターに、そしてひくつくシライの肛門に垂らしてから、抜き出したときと同じようにゆっくりとシライの体の中に戻していく。シライは球を一つ飲み込むごとに体を震わせながらも、一度叩いたおかげか、苦しげな息を漏らすだけで耐えている。
「痛みはないか?」
「うぅ……」
「そうか」
シライが涎を啜り上げる音を聞きながら、ゴローが続けて行ったのは技巧も何もないただの前後運動だった。どうせ一回しか使わないのだからと大量に使ったローションが中からあふれ出て、ゴローの手の動きを助けた。
「あぃっ、お、」
「おまえが望んだことだ」
シライが「犯してくれなんて言わねぇよ」と言ったことを、ゴローは覚えている。極力ゴローに手間を掛けさせない妥協案――にしては要求が大きいが――が、道具を使った放置プレイだった。シライの痴態を見ても熱を持たない自身に安堵すればいいのか、男として不安に思えばいいのか分からない。
「ぅう……ふぐぅっ……!」
自ら選んできただけあって、シライの体に合ったものなのだろう。ゴローがシライの肛門からバイブレーターを出したり入れたりする間に、シライが上げていた否定らしい呻き声は切なげな声に変わっていった。抵抗なのか反射なのか、シライは時折肛門をきゅうと締める。
「スイッチを入れるか?」
「ぃ、いあぁい」
「分かった」
「あぐッ……うぐうぅうっ!!」
バイブレーターのスイッチを入れたゴローは、跳ね起きようとするシライの上体を押さえつけた。
シライが本気で抵抗する気ならば、抑え込むには片手では足りない。足りるということは本気ではない。シライは取り繕うということを知らない人間だったが、下手に話しかけたせいで理性が戻っているのだろう。ここまでさせておいて遠慮されると逆に手間に感じる。
突き入れたバイブレーターは離さないまま、ゴローが「シライ」と名前を呼ぶと、シライは体をびくつかせながら素直に頬を床に押し付けた。拘束を解こうとしていた腕の動きが、シライ自身の意思で止まる。
びくっびくっとシライの体が絶頂を迎えたらしい痙攣をした。脱力しきる前に、動き続けるバイブレーターに高められて再び力が入る。腸壁は自らの意思で動かすことができない。いくらシライが根元を締め付けても、バイブレーターは中でぐりぐりと回転を続ける。挿入する手を緩めれば排出されてしまうバイブレーターをゴローが押し戻すと、シライは悲鳴じみた声を上げた。
「……ッ! あひおっ、あひぉほぉっ、ひあ、いぃああ……っ」
「嫌じゃないだろう」
「うぶうぅううぅっ、ぐ、うッ!!」
ボールギャグのせいで抑えることのできない声が、聞いたことのない甘さを帯びて部屋に響く。執務室まで聞こえていたのはどの声か。シライの体熱を感じながら、ゴローは安請け合いしたことを後悔した。
シライが既に何度も達していることは知っている。やめどきも、モーターが動いている状態で抜き差ししていいものなのかも分からず、ゴローは一番深くまで入れた状態でバイブレーターを押さえ続ける。
「いぐっ、あぃおっ、ひぐぅうう……!」
頭を床に擦り付けて、子供が泣いているような声でシライは言う。意を決したゴローが作動させたままのバイブレーターを抜き、そして再び挿し入れると、シライはさらに体をびくつかせた。勃起中に小便が出ることはないはずで、だがそれにしては聞こえる水音が長すぎる。
シライと約束した時間まであと十分。
ゴローは壁掛け時計を睨み見て、急な来訪者が現れないように祈った。
「ほら、飲め」
ゴローは口枷の留め具を外して床に落とし、シライの口元にペットボトルの口をあてがった。
ぼんやりした表情のまま、餌を差し出された雛鳥のように素直に口を開きかけたシライは、はっとした顔で口をつぐんで首を振った。
「自分で、飲める」
「拘束されているのにどうやって」
「……腕……外してくれ」
「今外しても手がしびれてまともに持てまい。いいから先に飲め」
ゴローはもう一度ペットボトルの口をシライの唇に押し付けた。
拗ねてでもいるように唇を閉ざしていたシライだったが、譲る気のないゴローの目を見上げてから、いかにも渋々といった顔で唇を開いた。ゴローが傾けるペットボトルに合わせて首を傾ける。
「ん」
はじめのうちはごくごくと喉を鳴らしながら無心に水を飲んでいたシライは、縋るような目でゴローの目を見る。渋々だったはずの目がとろりと熱を帯び、その目を見返しながら、ゴローはなおもペットボトルを傾け続ける。ペットボトルの傾きは、シライが飲み続けていなければ中身が床にこぼれる角度だ。
シライは眉を寄せた。
元より腕を後ろで固定された状態の姿勢は不安定で、絶頂し続けた疲れもある。水を飲んでいる状態では息継ぎもままならず、常ならば飲み干すくらい訳ない500mlを飲み切る前に、シライは口の端から水をあふれさせた。
「んぶっ、ん、んぐ…………っげほっ、ごほッ」
口に入っていた分は意地で飲みきったシライだったが、その分、盛大にむせた。咳き込みながら手で口を塞ぐこともできず、体を二つ折りにして咳き込み続ける。逆流した水が鼻に入ったらしく、シライは鼻を啜っては涙を滲ませた。
「……くそっ」
「まだ飲むか?」
「もういい」
シライの体に触れることなくシライがむせる様子を見ていたゴローは、顔を上げたシライの恨みのこもった睥睨を平然と受け止めた。残量が三分の一ほどになったペットボトルのキャップを締めて脇に置く。
シライの側にしゃがみこんだゴローは、まだ睨んでいるシライの目が色を帯びていないことを確認してから、シライの腕のベルトを解きに掛かった。汁まみれのシライをどうやって風呂場に連れて行くかが問題だった。
- 投稿日:2024年9月8日
- 普通にセックスするゴロシラが無理なら「恋愛感情はないけど欲求不満のシライを何とかしてやりたいので何とかしてやる隊長」で行こうとしていた名残を完成させました。シライがどうやって頼み込んだのかは考えていません。とりあえずセックスすることに決まりました!から始まらないゴロシラは私の中にあるんですかね……