「廃工場にて」の省いた部分のリサイクル品です。
誘拐犯×クロノの性的暴行が含まれます。
廃工場にて 余談
「うっ……うぅ……っ」
差し込まれた指を内側でぐにぐにと動かされ、トキネに覆い被さるように四つん這いになったクロノは呻き声を噛み殺した。
トキネが散々平気だと言ってくれたことに倣いたくとも、到底言えない状態だ。トキネも凍りついたような表情でクロノの顔を見つめていて、ごめん以外の言葉を交わしたのは随分昔のことのように思える。
「お兄ちゃんも声聞くだけなら女の子と変わんねぇな。あーあ、ほんとに姉妹ならよかったのに、残念だなぁ」
男に深々と溜め息をつかれて、クロノは傷つく必要なんてないのに傷ついた気持ちになった。男が言う通りにもし自分が女の子なら、トキネだけでも逃がしてやれたのだろうか。こんな半端な身代わりなどではなく。
「もう直接入れちゃうからねー」
クロノの思考を遮るように硬いものがぺたりと尻に押し当てられ、ブチュルという嫌な音と共に中に生ぬるい液体が入ってくる。
「うう……っ」
「こらっ」
思わず尻穴を締めたクロノの尻を、男は平手で叩いた。
痛みはそうでもなかったが、パチンッと高らかな音が響いて、恥ずかしさで顔が赤くなる。この期に及んで恥ずかしいという感情が生きていることが、クロノにとってはかえってつらかった。
「ローション入れとかないとつらいのはお兄ちゃんなんだぞ。女の子と違って濡れないんだから。ほらお尻開いて」
男の手がクロノの尻たぶをパン生地でもこねるようにぐにぐにと揉んだ。
尻を開けと言われてもやり方が分からず、尻に力を入れて叩かれた反省から、クロノは体の力を抜くことに専念する。組み敷かされたトキネの顔は見ないように、息を吐いて、トキネを潰してしまわないよう腕の力は入れたまま。
「おぉー、上手上手。ほーら、力抜いてろ」
「うっ」
手が滑ったとでも言うように男の指がクロノの中に入ってくる。ぐいと横に引かれて痛みが走ったところを、力を緩めて撫でられて、痛くないならもうそれでいい気がしてくる。倉庫の中は依然として暑かったが、濡れた尻は身じろぐ度にひやりとして、首筋にまとわりつく寒気もずっとそのままだ。
「お兄ちゃん今何本入ってるか分かる?」
「え……」
何本とは。訳も分からず、クロノが無意識に肛門をきゅっと締めると、男が忍び笑いを漏らした。
どういう形で入っているのか、男の指のごつごつした感触を感じながらクロノは必死で考える。ヒントを与えるつもりなのか指を抜き差しされて、最初よりもずっとスムーズな動きに余計に分からなくなり、クロノは焦った。
まだ一本と言われたときは苦しくて、でも今はそんなに苦しくない。クロノはついトキネの顔を見て、不安そうな眼差しを正面から受け止める。きっと自分も同じ顔をしている。泣いてしまえばいいのに、泣いても解決しないから泣くに泣けない、そんな顔を。
「……二本……?」
男が「まだ一本」と言ったということはもっと入れる予定だということで、一本しか入らないままでは計画が進まず解放されないということだ。男の太い指が出すための穴に何本も入ってしまう気持ち悪さと、このままずっと解放されない恐怖を天秤にかけて、クロノは最初より一本だけ増やして回答した。
「おっ! せいかーい! 敏感だなぁお兄ちゃん!」
「う、あ、やめ」
中で指を動かされる。圧迫感以上の精神的な気持ちの悪さ。痛くないのに、離れた場所にあるはずの胃が押し上げられているような感覚。
「先っぽだけ入れてみようか。亀頭は丸いからな、意外と指より楽なんだよ。な、お兄ちゃん。トキネちゃんもお兄ちゃんと早くおうち帰りたいよな?」
どう答えるのが最良なのか。流石のトキネもこの異常事態に対応しきれないらしく、涙目のままクロノを見上げている。
クロノは片手を地面から離し、トキネの手を握った。柔らかくて小さな手。自分の汗か、トキネの汗か、じっとりと濡れた感触がある。冷え切ったトキネの手はそれでも安心感があって、クロノはずっと握っていたかったが、握ったまま手をつけばトキネの手の甲が硬いコンクリートの床で擦りむけてしまうから、握るだけ握ってそれから離す。
「う、ん……入れていい、よ」
絶対に間違った判断だ。答える前から分かっていたクロノは、心臓にキリを通されたような痛みを感じた。
「あいたた、お兄ちゃんもっと力抜いて! ちんこ千切れちゃう!」
「いっ……ッ、ぅっ……!」
歯を食いしばって悲鳴をこらえても、涙までは止めようがなかった。
硬いコンクリートの地面にガリリと爪を立てていたクロノは、そのことに気づくと、ハァハァと浅い呼吸を繰り返しながら力を緩めた。汗が目に入り、瞬いて落ちた滴がトキネの顔にかかる。
「ごめ……」
「ごめんなさい」
トキネの口から出たのは、思わず口からこぼれた、そんな調子の言葉だった。
「ごめんなさい、お兄ちゃん、ごめんなさい……っ」
「トキネ、大丈夫だ、おれ大丈夫だから」
「ごめんねぇ……っ」
泣きじゃくるトキネなんて久しぶりに見た。クロノはトキネのくしゃくしゃの泣き顔を見下ろしながらオロオロした。泣きたいのはクロノだって一緒で、というかクロノが泣いたからトキネが泣いているので、もうずっと手一杯のクロノは鼻水を啜り上げた。涙を堪えようにも、下を向いているせいで涙はぼろぼろとこぼれ落ちてくる。
「あーあ、お兄ちゃん、トキネちゃん泣いちゃった。あれ、お兄ちゃんも泣いてるのか。ごめんな? すぐ済ませるからな?」
男はクロノの腰を掴んで「はは、細っけぇ」と暢気な感想を述べた。ずっ、ずっ、と男が陰茎を押し込む度に新たな痛みが押し寄せて、なのに最初の痛みはちっとも収まらない。
「うっ、ぐ、うぅっ……!」
「よっしよし」
押し入ってきたものが止まる。頭を撫でる代わりか尻を撫でられて、クロノはいや増した気持ち悪さに奥歯を噛み締めた。息をする度に男の存在を後ろに感じて、クロノはどうすればいいのか分からずできるだけ力を抜こうとする。
これが終われば、トキネと家に帰れるはずだ。何もかもが元通りになるのだ。いつも通り家に帰って手洗いうがいを済ませて、約束通りにゲームをして、宿題をして、ご飯を食べて眠る。明日になったらまた学校に行く。誰もしゃべれる相手のいない学校に。その繰り返しだ。
「トキネ、がんばろう」
トキネはまた友達に会える。自分はともかくトキネは大丈夫だ。
クロノは涙を拭い続けるトキネの手を取って、もう一度握った。泣いたせいか涙のせいか、トキネの手はさっき触ったときよりも温かくなっていた。
- 投稿日:2024年10月3日