#BLEACH 導入だけ書いた一護×斬月のおっさんの筆おろしよしよしセックス伏せた部分を読む「経験がないことは恥ではない」「何も言ってねえだろ!」 真正面。いつも通りの断定系で言った斬月を一護は睨んだ。 信頼関係と呼べるものを築けた今でも、現れた斬月が最初に立つ位置は出会った当初から変わっていない。 余人のいない空間といえども声を張って話したい内容ではなく、もう少し近くに来てほしいと思ったが、一護のことを文字通り生まれてからずっと見守り続けていた斬月に改めて言い訳をする意味はない。一護はそれ以上言うことを諦めて、苛立ち紛れに大きく息を吐いた。 久しぶりの学校、久しぶりの馬鹿騒ぎ。 尸魂界の面々とも馬鹿げた掛け合いはいくらでもやっていたが、死線などというものを意識したことがない頃からの相手と話すのはまた別の楽しさがある。変わらず接してくる面々にもみくちゃにされ、一護の抱えていたわだかまりは一瞬で彼方へと押し流された。 ――が、生死を意識したことがない仲だからこそ、重大事も変わってくる。 現世や尸魂界、果ては世界そのものまで背負ったことのある一護の両肩には、今は「童貞」の二文字が重く伸し掛かっていた。「ならば私とするか」「は?」「経験がないことが不安なのだろう。一護、お前が曇ることを私は望まぬ」 一護は現実逃避から無意識に空を見上げた。心情はさておき曇る気配はなく、ところどころに白い綿雲が浮かんだ穏やかな青空が広がっている。 いや違う。「そういうことじゃねえだろ! そうやってするもんじゃねえし!」「では誰とする」「それは、ほら」 好きなやつと、とごにょごにょと言った声は、臨戦時の一護しか知らない者ならば驚くような歯切れの悪さだった。 好きなやつとは言ったものの具体的に思い浮かぶ顔のない一護は、学校で言われた「子供だ」というからかいを頭の中で反復し、うるせえと声に出さないまま眉間に皺を刻んだ。「ならば私の方は問題ない」「は?」「私はお前が好きだ。問題があるとすれば一護、お前の方にある。私が相手に適さぬと言うのならば身を引こう」「適すも適さないも、斬月のおっさんはおっさんだろうが」「若い方がいいか」 瞬間、二人の脳裏をよぎったのは天鎖斬月の姿だ。一護は刃を交えていない時にまで相手の思考が読めるわけではなかったが、サングラス越しに合わせた目からそれを察する。「違う!」 一護は思わず吠えた。姿が若ければいいというわけではないし、ついでに言うなら自分によく似た容姿の虚の力を宿した方の斬月もごめんだった。斬魄刀の打ち直しを経て体を乗っ取ろうとしているという認識こそ改まっているが、あちらの斬月がどんな教え方をするか想像したくもない。「……そりゃあ、俺だっておっさんのことは嫌いじゃねえよ」 考えていることは元から筒抜けだ。一護はぐちゃぐちゃと言い訳するのが馬鹿らしくなり、眉間に深々と皺を寄せたまま、ひとまず斬月からの好意に好意を返した。何年も共に歩み導いてくれた相手を嫌うわけがなかった。「ならば決まりだ」 そう言った斬月の声からは、どことなく安堵が感じられた。表情は相変わらずの無表情。それでも伝わってくるまるで己の役目を果たせるとでもいうような様子に、毒気を抜かれた一護はついに抗弁の機会を逃した。畳む 小ネタ 2024/01/28(Sun) 20:33:12
「経験がないことは恥ではない」
「何も言ってねえだろ!」
真正面。いつも通りの断定系で言った斬月を一護は睨んだ。
信頼関係と呼べるものを築けた今でも、現れた斬月が最初に立つ位置は出会った当初から変わっていない。
余人のいない空間といえども声を張って話したい内容ではなく、もう少し近くに来てほしいと思ったが、一護のことを文字通り生まれてからずっと見守り続けていた斬月に改めて言い訳をする意味はない。一護はそれ以上言うことを諦めて、苛立ち紛れに大きく息を吐いた。
久しぶりの学校、久しぶりの馬鹿騒ぎ。
尸魂界の面々とも馬鹿げた掛け合いはいくらでもやっていたが、死線などというものを意識したことがない頃からの相手と話すのはまた別の楽しさがある。変わらず接してくる面々にもみくちゃにされ、一護の抱えていたわだかまりは一瞬で彼方へと押し流された。
――が、生死を意識したことがない仲だからこそ、重大事も変わってくる。
現世や尸魂界、果ては世界そのものまで背負ったことのある一護の両肩には、今は「童貞」の二文字が重く伸し掛かっていた。
「ならば私とするか」
「は?」
「経験がないことが不安なのだろう。一護、お前が曇ることを私は望まぬ」
一護は現実逃避から無意識に空を見上げた。心情はさておき曇る気配はなく、ところどころに白い綿雲が浮かんだ穏やかな青空が広がっている。
いや違う。
「そういうことじゃねえだろ! そうやってするもんじゃねえし!」
「では誰とする」
「それは、ほら」
好きなやつと、とごにょごにょと言った声は、臨戦時の一護しか知らない者ならば驚くような歯切れの悪さだった。
好きなやつとは言ったものの具体的に思い浮かぶ顔のない一護は、学校で言われた「子供だ」というからかいを頭の中で反復し、うるせえと声に出さないまま眉間に皺を刻んだ。
「ならば私の方は問題ない」
「は?」
「私はお前が好きだ。問題があるとすれば一護、お前の方にある。私が相手に適さぬと言うのならば身を引こう」
「適すも適さないも、斬月のおっさんはおっさんだろうが」
「若い方がいいか」
瞬間、二人の脳裏をよぎったのは天鎖斬月の姿だ。一護は刃を交えていない時にまで相手の思考が読めるわけではなかったが、サングラス越しに合わせた目からそれを察する。
「違う!」
一護は思わず吠えた。姿が若ければいいというわけではないし、ついでに言うなら自分によく似た容姿の虚の力を宿した方の斬月もごめんだった。斬魄刀の打ち直しを経て体を乗っ取ろうとしているという認識こそ改まっているが、あちらの斬月がどんな教え方をするか想像したくもない。
「……そりゃあ、俺だっておっさんのことは嫌いじゃねえよ」
考えていることは元から筒抜けだ。一護はぐちゃぐちゃと言い訳するのが馬鹿らしくなり、眉間に深々と皺を寄せたまま、ひとまず斬月からの好意に好意を返した。何年も共に歩み導いてくれた相手を嫌うわけがなかった。
「ならば決まりだ」
そう言った斬月の声からは、どことなく安堵が感じられた。表情は相変わらずの無表情。それでも伝わってくるまるで己の役目を果たせるとでもいうような様子に、毒気を抜かれた一護はついに抗弁の機会を逃した。畳む