雑記帳

日記とか備忘録とかそういうの

#ツイステ 小園さんに送りつけたレオラギです。3章までを1度やったきりで用語も口調も全体的に不安。

 葉擦れの音が聞こえる。水分を含んで重たく茂った葉の音だ。それに鳥の囀り。遠くに聞こえる笑い声は寮生のもので、ボールか何か、マジフトのディスクとは別のものを使った遊戯の音。
 無意識に耳をそばだてていたレオナは寝返りを打った。体温の移っていないシーツに頬を寄せる。この部屋は窓を開け放っていても砂も熱気も入ってこない。心地よい風だけが吹く。
 足音。急ぎの。歩幅は子供のものではないが、体重は軽い。
「レオナさん!」
 目を瞑ったままのレオナの頭上にばさりと布が落とされる。軽いが、量があるせいで重い。
「運動着、名前書いてくださいって言ったッスよね!」
「ラギー……」
 卵の黄身のような黄みの強いオレンジ色の隙間からレオナは顔を出した。わざとなのか腕組みをして見下ろしてくるラギーはなぜだか実験服を着ている。ふわあ、とあくびをしながら起き上がり、じろりと見る。ラギーが気圧されまいとするようにぐっと腹に力を入れたのが見て取れて、レオナは口角を上げた。
「名前書かなくても分かってんじゃねえか」
「そりゃあ俺たちハイエナは嗅覚が優れてますからレオナさんの服くらい分かります。でもそういう問題じゃないッス!」
「俺以外の全員に名前書かせろよ。消去法で書いてないのが俺のだ」
「寮生何人いると思ってんスか。レオナさん一人に書かせたほうがずっと楽ッスよ」
 落ちている運動着を無視してベッドから抜けようとすると、ラギーが慌てて手を差し伸べて、「せっかく洗ったのに床に落とさないでくださいッス!」と目の色を変えている。
「てめぇが自分で置いたんだろうが」
 言えば、間違いはないからかジトリとした目を向けられる。
「困るのはレオナさんッスよ」
 言いながら空中で畳んでいく様子は、さながら部屋付きのメイドの様相だ。
 ラギーはレオナのベッドの上にパンケーキのように積み上げた黄色をまとめて拾い上げ、すたすたと壁際の箪笥に向かって中にしまう。最初からそうすればいいんだ、と思いながら、レオナは今度こそベッドから立ち上がった。「昨日片付けたばかりッスよ!?」と言いながら、ラギーは床や机を片付け始める。そうは言っても出しっぱなしで不便したことがないのだ。
「洗ってても俺のにおいが分かるって?」
「そりゃあ何回も着てたらにおいはつくッスよ」
「へえ、じゃあ」
 ラギーのにおいとはどんなだったか。ライオンもそれなりに鼻はいいが、あまり意識したことがない。縄張りにいる同族のにおいは気になるが。そう思いながら、レオナはラギーのにおいを嗅いでみる。
「ひゃあ!」
 レオナが鼻を寄せた首筋を手で押さえ、ラギーは振り返った。
「なんスかいきなり!」
「……ラギーお前、俺の部屋に来すぎだろ」
「は? 誰のせいで」
「俺のにおいがする」
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