うな
2025/12/3 06:54
緑茶とカブトガニとうんこが好き。今のハマっているものの話と旅行の話がメインのはず。居酒屋メニューが好きなんだけど、お酒を飲まないから旅先のご飯は定食屋さんになりがち。
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「無理なら無理でいいぞ」
男に言われてやっと、俺は自分が相手の容姿に面食らっていたことに気がついた。
同世代男性の平均身長である俺が見上げなければならないのだから、男の身長は180センチ近くあることは間違いなく、腰掛けていた植樹の囲いを兼ねたベンチから立つまで背の高さに気づかなかったからには、長いのが胴ではなく足であるのは確実だった。
厚みのあるコットンシャツに黒っぽいパンツ。毛先を遊ばせた黒髪には、ブリーチにしては艷のある金色が数束交じっている。瞳の色の淡さから外国にルーツがあるのかと考えたところで、俺は自分がまたしても呆けていたことに気がついた。
「いや、こちらこそすみません。見とれてました」
「なんだそれ」
気を取り直した俺が言うと、男は笑った。
俺は内心ほっとする。アプリで見た写真では男は可愛い寄りの顔立ちをしていて、ギリギリ抱けそうなラインだったが、待ち合わせ場所についた時、遠目に見る男の横顔の冷たさに、声を掛けるのを躊躇っていたのだ。笑った顔は、アプリで見るよりも人懐こそうに思えた。
繁華街に近い公園で、平日の昼だろうが人の行き来は絶えない。何度か使っている待ち合わせ場所だったが、幸い、前に会った人間と再会したことはなかった。挨拶もそこそこに、俺は男の「行こうぜ」という言葉に従い移動を始める。
男がプロフィールに使っていた写真は他撮りだった。隠し撮りのようにも見える、ありふれたカフェチェーンのロゴ入りカップを傾けている写真。どの程度加工されているのか俺がAIにチェックさせようとすると、AIはなぜだかエラーを吐き出した。
ますます募る怪しさに、とんでもない化け物が来る可能性を思いつつも会うところまで話を進めてしまったのは、男とするセックスに興味があったからだ。向こうから誘ってきたから、というのは飲み会のネタにするときの言い訳にもなる。
「身長サバ読んで悪かったな。本当の数字書くと避けられがち」
「俺はまんまと引っかかったわけですね」
面食らった理由はバレていたらしい。怯まず混ぜ返すと、男は得意げに口角を引き上げた。その表情をすると、アプリに登録されていた年齢よりも子供っぽく見える。
「……年は嘘じゃないですよね?」
俺は念のために確認する。男がタメ口で話してくるのに俺がですますを付け続けているのは、プロフィールが正しければ男は俺より年上だからだ。人生はこの先の方が長い。おもしろ半分で会うことを決めたとはいえ、未成年に手を出してネットのおもちゃになるのはごめんだった。
「十七歳には見えねーだろ」
「それは、まあ」
男は同い年くらいにしか見えないものの、見た目に話し方の落ち着きを合わせて考えれば、流石に高校生はないだろう。それなら大丈夫か、と俺は追求をやめる。
「立ってるから気になんだ。早くホテル入ろうぜ」
俺が男の顔を見ていたのは身長を気にしてのことではなかったが、男に手を取られ、どうでもよくなった。女の子の柔らかさとはほど遠い、しっかりと厚みがある男の手だ。なのに、不快感よりも安心感を覚える手だった。
「こういうことしてほしくて生でシてっつったんじゃねぇの?」
口の中にあった精液を飲み込んでから、男――シライは言った。
オーラルセックスでもコンドームは付けるものなのだと、説教めいた口調で言いつつ生でのフェラチオを承諾したシライは、俺が出した精液をご丁寧に見せてくれたのだ。俺が生フェラを希望したのは好奇心からで、断られたなら断られたでよかった。別れた彼女はフェラが嫌いだったし、毎回なだめすかして咥えてもらうところまで持って行けるほどの器用さは俺にはなかったから、ゴムありでも舐めてもらえるなら御の字だった。口の仕組みは女も男も変わらない。そういう発想だったのにAVでしか見ないようなことをされて、俺の頭は完全にいかれてしまった。
ベッドの下に座り込んだシライは、ガン見している俺の視線を受け止めながら、にんまりと笑う。男とするのが初めてだと言った俺を気遣って、シライは服を着たままにしている。この瞬間に男でイけない可能性が霧散したことが、男が好きなのだというシライの目には明らかなんだろう。
シライは射精直後の触られたくないタイミングをきれいに外して、再び熱を持ち始めた俺を励ますように手を添える。同じものが付いているからか、絶妙な力加減だ。俺は顔を覆った。
「女でイけなくなったらシライさんのせいだ……」
「いいじゃねぇか。そしたら相手のこといっぱい気持ちよくしてやれるだろ」
楽しそうに言いながら、シライは俺のちんこに口づける。先に快感を教えられたから、口づけだけでは物足りない。腰が動きそうになるのを意地になって止める。チョロいと思われたくない。
「……シライさんほんとに女だめなの? その顔ならモテるでしょ?」
「おまえ男にモテたら嬉しい?」
「いや……」
「そういうこと。人として付き合えねぇわけじゃねーけど、ムラムラしねぇんだよ」
「それってさ」
「すげーモテる。表に出たら黒山の人だかり」
「それは嘘でしょ」
俺のツッコミに満足したのか、シライはようやくちんこを咥えてくれた。畳む